Microsoft Officeの新バージョンをいち早く使うことのできる「Office Insider」をWindows 10にインストールしてみたので、その際の手順について紹介します。
Office Insiderとは
Office Insiderとは、Microsoft Officeの新バージョンを一般ユーザーよりも早くインストールすることのできるプログラムです。(ベータ版のようなものです。)
不具合が発生するリスクが高くなる一方で、新機能をいち早く試すことができるというメリットがあります。
希望するユーザーがいち早く新機能を試すことができるという点では、Windows 10 Insider Previewと似ています。
個人向けのMicrosoft OfficeでOffice Insiderを利用する方法
Microsoft Officeのヘルプページによると、「Office 2019」や「Office 365 Solo」などの個人向け(一般家庭向け)のMicrosoft Officeを利用している場合は、WordやExcelなどのOfficeアプリの設定や、Office 365アカウントページなどから「Office Insider」を利用することができるようになっています。
企業、教育機関向けのOffice 365でOffice Insiderを利用する方法
その一方で、「Office 365 ProPlus」などの企業(法人)向けや教育機関(学校)向けのOffice 365を利用している場合は、Officeアプリの設定やアカウントページから「Office Insider」を利用することができません。
Microsoft Officeのサポートページによると、通常は企業のOffice 365アカウントの管理者が「Office 365 管理センター」からOffice Insiderに関する設定を行う必要があります。
しかし、「Office展開ツール」と呼ばれるインストーラーを利用することで、管理者ではない一般のユーザーもOffice Insiderを利用することができます。
私の場合は、大学から提供されているOffice 365アカウント(Office 365 ProPlus)を利用していたため、Office展開ツールを利用して、手動でOffice Insiderのインストールを行いました。
これから、その際の流れについて紹介します。
Office Insiderのインストールの準備を行う
Office Insiderを、Office展開ツールを利用してインストールする際に必要となる準備です。
Office展開ツールをダウンロードする
「Office 2016 展開ツール」をMicrosoftのダウンロードセンターからダウンロードします。
ダウンロードセンターにアクセスして、「Download」ボタンをクリックすると、展開ツールのEXEファイルがダウンロードされます。
Office展開ツールの言語は、English(英語)になっており、変更することができません。
ダウンロードされたファイルは、「officedeploymenttool_11107-33602.exe」という名称でした。(Office展開ツールのバージョンによっては、名称が異なる場合があります。)
Office展開ツールを実行する
ダウンロードしたEXEファイル(実行ファイル)を、Windowsエクスプローラーなどからダブルクリックして実行します。
Windowsの設定によっては、「ユーザーアカウント制御」画面が表示されることがあります。その場合は、「はい」ボタンをクリックします。
ライセンスに同意する
「マイクロソフト ソフトウェア ライセンス」(英語)が表示されるので内容を確認します。
同意できるならば「Click here to accept the Microsoft Software License Terms.」の隣にあるチェックボックスをクリックしてチェックを入れます。
チェックボックスにチェックを入れると、「Continue」ボタンのグレーアウトが解除されるので、クリックします。
ライセンスに同意しない場合は、Office展開ツールを利用することができません。
展開されたファイルの保存先を選択する
Office展開ツールで展開されたファイルの保存場所を選択します。
保存場所の選択が完了したら、「OK」ボタンをクリックします。
「新しいフォルダーの作成」ボタンをクリックすると、選択されている場所にフォルダーが作成されます。
ファイルの展開が完了した
1秒ほどでファイルの展開が完了し、「Files extracted successfully.」というダイアログが表示されます。
「OK」ボタンをクリックしてダイアログを閉じます。
展開されたファイルを確認する
先ほど指定したフォルダーに、以下のファイルが展開されました。
- configuration-Office365-x64.xml
- configuration-Office365-x86.xml
- configuration-Office2019Enterprise.xml
- setup.exe
3つの構成ファイル(.xml)と1つの実行ファイル(.exe)の合計4つのファイルがあります。
次の手順では、構成ファイルに書かれているインストールオプションを編集します。
構成ファイルを編集する
テキストエディター(Windowsのメモ帳やVisual Studio Codeなど)で構成ファイル(64bit版をインストールする場合は「configuration-Office365-x64.xml」を、32bit版をインストールする場合は、「configuration-Office365-x86.xml」)を開き、以下のように編集します。
ここでは、言語を日本語(ja-jp)に、Office Insiderの種類を「Insider Fast」に変更しています。また、フローチャート作成ソフトである「Microsoft Visio Professional」はインストールしないので、「Product ID=”VisioProRetail”」の部分は削除しています。
<Configuration>
<Add OfficeClientEdition="64" Channel="InsiderFast">
<Product ID="O365ProPlusRetail">
<Language ID="ja-jp" />
</Product>
</Add>
</Configuration>
不要な構成ファイルを削除する
先ほど編集したもの以外の構成ファイルは不要であるため、削除しておきます。
64bit版をインストールする場合は 「configuration-Office365-x86.xml」と「configuration-Office2019Enterprise.xml」を、32bit版をインストールする場合は「configuration-Office365-x64.xml」と「configuration-Office2019Enterprise.xml」の2つの構成ファイルを削除します。
構成ファイルの名前を変更する
Windowsエクスプローラーで構成ファイルを右クリックし、コンテキストメニューの「名前の変更」を選択してファイル名を「configuration.xml」に変更します。
Office Insiderのインストールを実行する
インストールのための準備が完了したので、インストールを実行します。
Office Insiderのインストールは、セットアップウィザードではなく、コマンドプロンプトでコマンドを実行することで行います。
コマンドプロンプトを管理者として実行する
Windows 10のタスクバーに表示されている検索ボックスや検索ボタンをクリックし、「cmd」と入力します。
検索結果として「コマンド プロンプト」が表示されるので、「管理者として実行」という項目をクリックします。(Windows 10の以前のバージョンの場合は、右クリックする必要があります。)
「ユーザーアカウント制御」画面が表示された場合は、「はい」ボタンをクリックします。
Office構成ファイルの保存場所のアドレスをコピーする
Windowsエクスプローラーで、先ほど編集したOffice構成ファイルの保存場所のフォルダーを開き、アドレスバーを右クリックします。
コンテキストメニューが表示されるので、「アドレスのコピー」という項目をクリックします。
コマンドプロンプトで構成ファイルの保存場所に移動する
先ほど管理者として開いたコマンドプロンプトで「cd (コピーした構成ファイルの保存場所のアドレスを貼り付ける)」と入力し、エンターキーを押します。
コマンドの例:cd C:\Users\anlovegeek\Desktop\Office展開ツール
インストールを実行する
Office Insiderのインストールを実行していきます。その際にファイルのダウンロードが行われるため、時間がかかります。
コマンドプロンプトで「Setup.exe /configure configuration.xml」と入力し、エンターキーを押します。
「Officeをダウンロードする間、オンラインのままお待ちください」と表示され、インストールが開始されました。
インストールが完了するまでは、コマンドプロンプトを閉じないようにする必要があります。
タスクバーの隠れているインジケーターを表示し、オレンジ色のOfficeアイコンをクリックすると、Office Insiderのインストールの進捗状況をパーセント表示で確認することができます。
Office Insiderのインストールが完了した
Office Insiderのインストールが完了すると、「すべて完了です。Officeはインストールされました」と表示されます。
私の環境では、Office Insiderのインストールの所要時間は17分ほどでした。
次に、Office 365アカウントにログインして、Microsoft Officeのライセンス認証を行います。
スタートメニューを確認すると、Officeアプリが追加されていることがわかります。
Office 365のライセンス認証を行う
Word、ExcelなどのOfficeアプリを開くと、「アカウントを確認してください」と表示されます。
表示されているアカウントがOffice 365のアカウントである場合は「次へ」ボタンをクリックすると、ライセンス認証が完了します。(サインインは必要ありません。)
一方で、Office365のアカウントではない場合は、サインインする必要があるので、「別のアカウントを使用する」という項目をクリックします。
「サインインしてOfficeを設定する」画面が表示されたら、「サインイン」ボタンをクリックします。
Officeにサインインする
「Office ライセンス認証」画面が表示されたら、アカウント情報を入力し、「次へ」ボタンをクリックします。
「パスワードを入力」画面が表示されたら、Officeアカウントのパスワードを入力し、「サインイン」ボタンをクリックします。
サインインが完了したら、「準備が完了しました!」と表示されるので、「完了」ボタンをクリックします。
Officeのライセンス契約に同意する
「ライセンス契約に同意します」と表示されたら、「同意する」ボタンをクリックします。
同意するとOfficeアプリを利用することができるようになります。
ライセンス認証に失敗した場合
アカウントの確認画面でOffice 365のアカウントが選択されていない状態で「次へ」ボタンをクリックすると、「Officeのライセンス認証を行うことができませんでした」と表示されます。
その場合は、「別のアカウントを試す」ボタンをクリックして、Office 365アカウントにログインします。
Office Insiderのバージョン情報を確認する
最後に、Office Insiderが正常にインストールされているか確認するために、バージョン情報画面を表示させてみました。
このように、バージョンの下に「Office Insider」と表示されていたので、正常にインストールされていることがわかりました。
リボンメニューの「ファイル」タブをクリックして開き、「アカウント」という項目をクリックすると、Microsoft Officeのバージョン情報を確認することができます。